四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪見越入道 ②≫

オラトリオ見越入道
刻露清秀
〈1〉

岩登りのメッカにふさわしい朝
ミナレットからのコールサインで目を覚まし
ツェルトの帷を披けば
円屋根に光あまねく
バットレスに人は鈴なり
地の刷毛には海運が繋がり
トランペットは義の倍音を吹き鳴らす。
度量のかぎりを晴れて領土と呼ぶならば
その響きは震旦、天竺、大秦に及び
民謡からも童謡からも遠いしらべで
モニュメンタルな史的奥義を伝えてやまない。
なぜなら真のオラトリオとは
時代病・風土病の蔓延する地へ
異教の富がコーラスをもって入城すること。
時にサラバンドのリズムで桟道を伝い
貿易風のメリスマはずむアリアを歌い
両吟、三吟、異言を胸に
啓典縦走、劇詩を成して逓奏しあう旅なれば。


(続編は次回)


なお、申し遅れましたが、当ブログで公開する詩は全て初出となります。無断での引用・転載は一切禁じますので、内容に関心を持たれた方は刻露清秀までご一報ください。