四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪見越入道 ⑯≫

オラトリオ見越入道
刻露清秀

〈5〉

時つ国を望みつつ
日択りの海を ゆたにたゆたい
販路を拓き、水運を増す
かの波乗り船、弥栄なれ と。
異国にあっても十組問屋は
あらゆる時代の箱書きが
渡海造りと組積造下に
列をなし、色をなして詰め寄る所。
霧は野づらを撫で
市街地には琺瑯を引き
組み香に供される舟また舟
晴れていれば無数の桂林がそばだつ偉観、
陸封を解かれて多士出ずるとき
帆にはつま弾く、箜篌またリラを、
どよめくばかりで手だてのない地へ
治世の夢とはさても作り置きできないゆえに。


(続きは次回)


いやはや、この2ヶ月で2日しか休みがとれません。また、敢えて触れませんが以前から条件面でも問題があり、当社の警備員からさえ一様にブラックな現場と目されているほどです。でもあともう少しの辛抱です。


9ヶ月にわたった改修工事も、ようやく終盤にさしかかりました。さまざまな建材の切りくずや、製品を入れてあった段ボールなどのゴミを連日産廃車にどっさり積み込んで出しています。そして印象的なのは、顔なじみになった業者や職人が日一日と現場を去っていくことです。甲信越や東北ナンバーの車を送り出すたびに、とりわけ一期一会の感を新たにします。詰所での会話などから、東南アジア出身でさまざまな職を経て日本人女性と結ばれ子供がいる職人も数名いました。


もっとも彼らを引き合いに出して、こちらが自虐や自嘲にふける必要はありません。なぜなら私自身、ある意味同時代に対して言葉もカルチャーも通じない異邦人であったわけだし、だからこそさまざまな知的試行錯誤を経てようやく本質的なものと結びついた自覚のもとに、不要材を棄てて建設的な方向で生きなおそうとしているのですから。