四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪鉄骨建って日は落ちて≫

毎朝9時に現場前へラフタークレーンをつけること約3ヶ月。

 

連日国道1号上へ規制帯設置のかいあって、狭小地に8階建てのスリムなビルの骨格が無事立ち上がりました。両隣の専門学校より頭一つ高くなり、今は屋上(R階)までデッキ敷きと配筋も終わり、順次スラブ上に生コンを打設して床の部分を作っているところです。

 

鉄骨建方は、前もって精密な立体的設計のもとに工場で一本一本製作された柱や大小の梁など(形は似ていても寸法や向きや穴の位置がそれぞれ違う)を、現場で吊って組み上げる順番に大型トラックで運んできます。当現場は特に狭いため、建て逃げといって、まず奥の方から鉄骨を最上階まで組み上げてしまいます。次に現場内の敷鉄板を全て撤去した後、今度はラフタークレーンを歩道から前面道路まで大きく張り出した状態で停め、手前側の鉄骨を組み立てていくのです。(建方全体でちょうどひと月かかりました。)

 

そのため、交通誘導的には、あとになるほど歩行者や自転車の車道への切り回し(迂回誘導)が難しくなります。大型の重機が眼前に居座って見通しを悪くしている上、音もうるさくて歩行者などへの声かけや身振りが通じにくいこと。さらに、建方が上へ進むにつれて鉄骨揚重時の危険範囲が広がり、また部材を仮置きするための路上スペースも必要で、歩行者を安全に通せる余地が極度に狭まってしまうからです。

 

ところで、これは建方を終えた現在でもそうですが、交通誘導警備のメンバーの多くは、建築現場の作業内容にはとんと無関心です。

昨年まで職長を務めた聖マリ医大病院現場でもそうでしたが、元請けの監督や各職長との打ち合わせや連絡を欠かせない私の立場と、半常駐的なサブや増員メンバーとでは、責任の有無はもとより、工程や搬出入車両への対応力、資材の名称・用途に至るまで、認識や知識に差がありすぎるのです。

 

だから、たまにベテランの常駐経験者が来ると、わずかな指示でさらりと役割を果たしてくれて助かりますが、数年やってもダメな隊員は結局いっつも肝心な所でぼおっとしているだけなので私が駆けずり回って対処しなければならず、週6でこれが続くとボディーブローのようにだんだんと心身にこたえてくるわけです。

 

そんなわけで、せっかく私の好きな澄んだ秋晴れ(刻露清秀)の季節がやってきたのに、仕事に疲れて記事の更新もままなりません。次回はぜひ写真つきで、紅葉散策か、8月に友人と登った北アルプスの山のことでも書きたいと思います。