四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪築き上げていくものと、悠揚迫らざるもの≫

医大病院建て替え工事のプロジェクトにて、私が交通誘導警備の新たな職長となってから、かれこれ3ヶ月余りが経ちました。


このひと月間は新病院棟の躯体工事に集中し、連日の鉄骨建方とデッキ敷きや生コン打設等で4階部分まで骨組みが建ちました。5月連休前には工事ゲート内にまだ土台部分しかなく、そこへ通じる構内道路は解体中の壁やら掘削時のガラ、埋め戻しの跡などで重機も雑然とひしめき合っていたのを思えば、まさに隔世の感があります。


しかしそんな感慨も束の間、工事は絶えず先の工程を見据えて協議が進みます。材料発注や搬入搬出の手はず、業者の手配、工程の手直し・練り直しなどが日夜切れ目なく続いていくのです。実際、毎日行う昼の打ち合わせでは、私も職長の一人として必ず出席します。搬入出車両の確認や、急坂の多い構内道路を大型車両が車底をこすらず通行できるかなど、その場で意見を求められることも少なくありません。


さらに先日からは、聳え立つ3基のタワークレーンの真下で大型車両の乗り入れや転回場となっていた『構台』という鋼鉄製の張り出しやぐらが解体されはじめました。と同時に、ちょうど4階の高さへじかに搬入車両が乗り入れできるようにコンクリの平坦路も造られていて、あと1ヶ月後には搬入動線が切り替わる見込みです。


このように、大規模な建築現場では、1~2ヶ月ごとに工事の局面が大きく変わる節目があります。警備経験5年5ヶ月の私が隊長を務めた中では、ドーミーイン後楽園(2017~18)と、イオンタウンふじみ野(2019~20)で工程の移り変わりと苦楽を共にしました。この医大病院建て替え工事もまた、来年の秋までさらなる紆余曲折を経て完成へとこぎつけることでしょう。


いま現場は常駐隊員がだいたい固定し、見るからにレベルの低い者は淘汰されて、常時7~8名でやっています。GW前の総勢19~20人当時の酷いメンツによほど懲りたのか、その後現場の所長や副所長が、人工(にんく·人件費)がかかりすぎるよ、と私に削減を求めてきたからです。しかしうちの会社も人材不足のうえ、東京五輪警備のため、当現場のメンバーからオリパラ期間中毎日2~3名を引き抜くことになりました。これでもし代わりにダメ隊員をあてがってくるようならば、これまでの私の苦心も水の泡です。


ともあれ、工事の進捗状況やダイナミックな揚重の流れに身を置いていると、日々スマホ画面に浮かんでくる時局的話題や毀誉褒貶記事の殆どがいかに他愛のない、取るに足らないものかを痛感します。また、好悪や政治的立場にとらわれて年々驕慢・偏屈になっていく著名人・文化人らを目にするたびに、社会的には途方もなく出遅れた私(まもなく52歳)のほうが、実ははるかに充実した思索の可動域を持っているのも実感します。
警備の仕事ですり減ることなく、この伸びしろを大切に育んでいけたら幸いです。