四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪春に先立つ転機について①≫

去る2月6日、22ヶ月あまりに及んだ聖マリアンナ医大病院の工事現場での務めが完全に終わりました。

 

職長として自己最長かつ圧倒的な密度で構築感のある貴重な経験をさせてもらいました。

 

新入院棟が12階まで建ち上がっていくプロセスと並行して、工事車両の通行や転回に必要な構内動線確保のために構台や長大なスロープやヘアピンカーブ状舗装道路を新たに造ったり壊したり。

 

建物ができたら今度は聳え立つ3基のタワークレーンを交互に解体し、その脇に一回り小さいクレーンを組み立ててはまた解体、を繰り返し、そのつど何トンもある部材を低床トレーラー数台に積み分けてバスロータリーから道路幅いっぱいに搬出したり。

 

怒涛のような生コン車や大型トラック、回送車の群れを、営業中の医大病院構内へ事故なく遅滞なく行き来させる難しさ。救急車や、付属の保育園へ向かう保護者の送迎車と、搬出入車両や待ち受ける職人たちとの双方に神経を使う車両捌き。

 

アパート自室に溜まった日々の各階作業図や月間工程表や殴り書きだらけの搬出入予定表は22ヶ月間の悪戦苦闘の置き土産です。でも工期が終わり竣工してしまえば、それらは無となり、ゼネコンや各業者との結び付きもさっとばらけて、またゼロから次の仕事が始まります。それが警備に限らず建築現場のありようでした。

 

ちなみに聖マリ現場を引き継いだのは神奈川に複数拠点のある数千人規模の警備会社です。都内とさいたまで100人ほどしか稼働していない私の所属会社では人材的にこれが限界でした。それを思えば、むしろ、建物竣工後も私を中心に外構工事や準備作業で2ヶ月間も呼んでもらい、最終日まで今まで通り電話やメール、呼びかけでこぞって指示や頼み事をし続けてくれた監督や職長さんたちには、ほんとに信用されていたんだな、といまも感謝の思いでいっぱいです。