四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪人員20名。職長の重圧と充溢(後半)≫

(続き)
さて、隊員20人のうちあとの14~15人は、病院各館を結ぶ構内道路の掘削工事に伴う大増員でした。


医大〜病院各館、さらに保育園…と、順次高台へ上っていく立地になっています。
外来や送迎で訪れる一般人の車は、坂を上がって初めて『工事中』の事態に直面することになります。病院のインフラに関わる埋設配管工事のため、掘る穴も深く、通れる道幅は狭められ、工事車両はもとより、救急車の動線も絡むため、片側交互通行のメンバーには熟達した隊員を重点的に配置しなければなりません。


問題は、連休前まで、さらにその先の病棟間を通行止めにして掘削・配管工事・擁壁解体・道路整備を同時並行で行っていたことでした。


坂の上部は屈曲した急坂を連ねて保育園へつながり、その先に工事ゲートがあって頂上の構台に達します。しかし、前述の片側交互通行区間を越えたあともなお一般車を長々迂回させるとなると、かどかどに誘導員をつけて交信させ、順路の説明もさせなくてはならないのです。


しかも迂回路の核心部が急勾配のヘアピンカーブになっており、一般車(保育園への保護者の送り迎え)や4t·8tダンプ、搬入トラック、医療用タンクローリー、重機回送車まで1台1台すべて切り返しやバック誘導で慎重に通行させる必要がありました。私がこの現場の隊長=職長になってから、昼の交代以外は基本的にずうっとこの場所を1人で担当しながら、無線で各班に指示も出していたのです。


ところで、隊員が20人もいれば、ひどいのも数名必ず混じってきます。例年4月は繁忙期も終わり、昨年ならコロナの影響もあってダメ隊員にはほとんど仕事が回らなかったのですが、今年はこの現場の大増員もあって最悪のメンツも連日フル稼働です。が、ただ立ってるだけで、工事ゲート内に迷い込む一般人に見向きもしないうつけ者。無線で再三促されるまで配置にすら向かわぬ怠け者。詰所で他職打ち合わせ中に大声で大人用オムツ着脱話をおっ始め、通行人には無駄話ばかりしていた大馬鹿者。


ほかにも、有料老人ホームの利用者かと見紛うほど認知症の進んだ者や見るからに病身の者(身体・精神各1)も来ました。しかもかれらはすべて新人ではなく他社の警備員経験者なのです。


『誰でもなれる最底辺の職業…』
5年前、何の予備知識もなく今の会社に飛び込んだとき、そんな世間の通念すら私は知りませんでした。しかしその後隊長・常駐経験を積んでいくなかで、職業人として認められれば他職とも普通に渡り合えるとわかり、それを励みに続けてきたのでした。


昨年来コロナ禍による失業や収入減で、生活困窮者が増え続けています。雇用されていると思って日々舐めきった態度で漫然とその場をやり過ごしている数名に関しては、連日会社に抗議した挙げ句、ついにマジでブチ切れて本社へ怒鳴り込み、管理職相手に猛省を求めました。実はふた月前にも、私より若い資格者の隊員が、レベルの低い隊員らと同じ待遇でこれ以上やってられるか、とうんざりして8年で当社を辞めていったのでした。


幸いその後、先述の通行止め区間の道路は出来上がり、迂回路に立たせるメンバーはいらなくなりました。明日からは総勢12名ほどに減らせそうです。連休期間中私は全休でしたが、現場の状況を見ておくため定期券利用で2度構内を訪れています。


《追記》
連休中、気分転換で登山にも出かけましたが、マイナーな岩山でルートが崩壊しており、人っ子一人いない急な崖(足元は滝)で心底冷や汗ものの撤退でした。