四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

2018-01-01から1年間の記事一覧

≪276日めが終わって≫

この一年も、無事仕事を終えることができました。 最初の100日間は、ビジネスホテル竣工までの追い込み期間。その後は都内のビル改修工事に伴う足場の組立・ばらしをメインに、ビルや社屋の新築、外構工事、道路舗装、下水道工事、店舗駐車場などの警備に携…

≪目の付け所と目の保養≫

クリスマス・イルミネーションが華やかな季節となりました。私の最寄り駅ではすでに11月中から点灯しています。 また駅のポスターでは年末年始にかけて首都圏の観光施設が競って文字通り光を観る幻想的なイベントを宣伝しています。 わざわざ雑踏の中へ出向…

≪私が目指す就航路≫

12月に入って、現場周辺の人通りも日に日に気ぜわしくなりました。今週は都内大通りに面したビルの正面に足場を組む作業。側道から歩道にヌッと突き出たトラックの前で通行人や自転車を誘導しつつ、トラックの脇をすり抜ける一般車を1台1台注意深く表通り…

≪朝の詰所にて≫

現場に早く着きすぎて、上番(勤務開始)時間まで間があるため、ここらでブログを更新したいと思います。以前、≪また一から足場を組んで≫の項で公開した詩を再編したもので、記憶に基づき2連まで載せます。 悲しるべの詩(仮題) 刻露清秀 踏みしめるのは 瞑…

≪限りない寂寥感に苛まれて≫

これまででいちばん更新が滞ってしまいました。その理由は、≪懐疑に大きく振れる針≫の項で述べた通り、絶望的な無力感に尽きます…。 自身の仕事、警備員としての毎日は従来通りメリハリがあって充実しています。対照的に、内外のマスメディアやジャーナリズ…

≪振り返り㊷≫

警備員としての生活再建が軌道に乗ったのを機にブログを始めて、そろそろ1年を迎えます。 ① 引きこもりやワーキングプア、無業失業…の七転八倒から現在に到る『社会復帰』の実例として。 ② 交通誘導警備業務の資格者となって常駐現場その他で隊長を務める、…

≪炎を測る3つの尺度(後半)≫

三.私にとって、炎とは心の持ちようのこと。 燃え上がる派手な火の手ではなく、至ってパーソナルで『灯芯大』な生きざまの謂でした。 元来が端正で中庸な性格の持ち主です。人を焚きつけ鼓舞させる火付け役には向きませんし、ネット上の『炎上』をもたらす自…

≪炎を測る3つの尺度(前半)≫

一. ここ半月ほど、現場の車輌誘導の難しさに直面し、気の重い日々が続いています。 場所は、≪懐疑に大きく振れる針≫などで書いた山の手のマンションの大規模修繕工事です。5~7月にかけて組んだ足場を、今度は丸1ヶ月かけて解体・搬出しているのですが、電柱…

≪秋に近づいて漸く動く尋幽の興≫

短期間で季節も様変わりです。夏は結局一度も山へ行けなかったので、これからの連休ですっきりした晴天になりそうなら、新潟あたりの2000m級の山に出かけてこようと思っています。 自社の警備員に私以外登山好きはいません。現場の職人も含めて私が山の話を…

≪生活再建…私の進言≫

8月最後の仕事も酷暑でした。埼玉県内のマンホール調査に伴う片側交互通行です。正午ごろひときわ暑くなり、何やら異常だなと思っていたら、午後いちいきなり雷鳴とゲリラ豪雨が炸裂。即刻作業中止となり車で駅まで送ってもらうというあっけない終わり方でし…

≪熱冷ましの休日に≫

お盆明けの日曜日から仕事に戻り、7日間で駐車場1・ビル新築工事2・改修工事3・道路舗装1とバラエティに富んだ交通誘導に携わりました。都内で天皇・皇后を乗せた車列が東大まで往復するため、生コン打設時間を午後にずらした日も印象的でしたが、やはり極め…

≪滝めぐりと再生への思い≫

このお盆休みは概ね静養にあてました。1日だけ千葉県の養老渓谷一帯へハイキングに出かけましたが、外房・内房はもとより、東京近郊の海や山は大体行き尽くしたなかで、このエリアだけまだ空白域だったのです。 ドライブ好きな友人の影響もあって、渓谷歩き…

≪生活再建…私の場合≫

お盆休み中、不安定な天気が続くとの予報で、縦走級の登山は取りやめました。雲に覆われた尾根歩きは、これまでの経験から、どこも似たような光景になってしまい、写真としてもつまらないし爽快感がないからです。ましてこの時期は山小屋も混み合い、1人テン…

≪いわゆる走馬灯が脳裏を駆け巡った日≫

台風の接近で、私の住む埼玉県南部は1日半ほど涼しくなり、雨も降ったりやんだり、しのぎやすいひとときでした。でも、また元の木阿弥です…。 先週までの炎天下の警備で頭に熱がこもってしまい、様子見のため3日間仕事を休みました。が、5日の日曜に毎年恒例…

≪ものには限度があるから≫

全国的に警備員殺しの夏となってしまいました。 台風接近時の荒天も清涼剤とはならず(その日はズブ濡れで店舗オープンセールの警備と搬入出車両対応)、その後3日連続で炎天下の道路舗装工事。いずれも4人体制の隊長で、特に初日は二本の幹線道路を斜めに結…

≪夏をめぐる苦い記憶とその一顆≫

警備員になって3度めの夏ですが、すでに体感的にはMAXといえる序盤戦の暑さでした。 就労中の夏のしんどさで近年記憶に残っているのは、2013年、空調のない物流倉庫内での汗だくのピッキングと在庫管理でした。その古い建物はさすがに翌年全面改修したのです…

≪現場雑感②≫

恐るべき猛暑のさなか、"灼けつくような造営" の現場を転々としています。(→《見越入道⑩》) 今週は、浅草の新築ホテル周辺の外構工事、つまり道路舗装や側溝・歩道の作り替えをみっちりとやりました。こういう土木の現場は、路面を剥いで行うため必ず誰か…

≪臨機応変考≫

私にとって2ヶ所めの常駐現場、都内14階建てマンション大規模修繕工事の足場が完成しました。(所要2ヶ月弱) すでにシーリング工、塗装工、タイル工などが連日建物のベランダや壁面に沿って作業を進めています。鳶さんたちと私の出番はひとまず終わり、来月…

≪懐疑に大きく振れる針≫

気温の急上昇と通勤疲れが体にこたえ、なかなかブログに手がつけられませんでした。また、ネットをめぐる嫌な事件が起こったり、総じてあまりに程度の低い使い手が多くいるとわかってくるにつれ、何かもう底知れぬ絶望的な徒労感に苛まれ、建設的な志が通じ…

≪不撓港詩篇≫

《不撓港詩篇》 刻露清秀 那辺を訪い、角々に頌を灯し 疑心庵から耆宿舎へと移りえた人は幸いだ。 釣具・工具・防具を併せもつ港のように かれは自ら時のオーナー、時翁となって 厳の世にも定の弓を取り 慧の矢をつがえて矍鑠としている。 それはあたかも、…

≪現場雑感≫

蒸し暑い日が多くなりました。警備員になって3度めの、苦手な季節に突入です。 今の現場は最寄り駅から遠いうえ、行き帰りとも全区間通勤ラッシュのため、特にくたびれます。無業失業中はもとより、これまで非正規の就労は地元での勤務が多かったため、朝晩…

≪また一から足場を組んで≫

先週から、現場が変わりました。都内・山の手のマンションの大規模修繕工事。建物のまわりに足場を順次立ち上げている最中です。 正面の道路が狭いうえ、向いが保育園と託児所で、通園時間のピークなのにトラックを横付けして仮設材を下ろさないと、9時から…

≪失地回復里程標≫

先日、済州島3泊4日のひとり旅から帰ってきました。かねてから、社会復帰・仕事定着後の目標のひとつを海外旅行と見定めていただけに、その体験は単なる観光気分を超えて精神史的な意義を帯びたものとなりました。このことについては後述します。 一方、警…

≪思い出すこと、良くも悪くも。≫

天候に恵まれたGWでした。 私も友人と一緒に静岡の2000m峰へ登ってきました。 でもGW後半は、とある工事現場の保安警備(巡回)を頼まれ、やけに暑い中、4日間ともゲート脇のガードマンボックスで過ごすはめになりました。周囲は残土の山と一面の鉄板敷きです…

≪リフレッシュ②≫

私には、大学時代からつながる唯一の友人がいます。ドライブ・スキー・登山を好む雪国育ちのアウトドア派です。彼とのドライブで海や山へ出かけることが、毎年恒例となっており、かれこれ四半世紀間、私の引きこもり・就業中・失業中にかかわらず年に2~3…

≪リフレッシュと次の課題≫

ビル改修工事現場での10ヶ月間の交通誘導警備が終わりました。 ホテルは無事完成し、家具・調度品・備品の大半も搬入できました。開業こそまだ先ですが、昨日は、施主(『お施主さん』と呼びます)、設計者、ホテル関係者、工事を手がけたゼネコン、と各社の…

≪見越入道 ⑲、そして久しぶりの訪問≫

オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈5〉(続き)波を焚く殷雷、陸の強者は座屈を恐れ、 前途は大灘、海の隼人は壊蝕を恐れ、 火の粉に彫り上げられた山容 洞門に光を満たす海抜の原器、 地涌にすら飽き足らず 暮れなずむほどに遠き交わり、 なべて保冷し、備蓄し…

≪見越入道 ⑱≫

オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈5〉(続き)投げ縄も投網も錨も届かない まさぐるような減音程より サメはひとすじのコラールを追って 島々の基を十度さまよう。 儀仗が入れ替わるたびに 多くの血潮が水揚げされる 海流どうしのぶつかりのなかで 珊瑚の春から…

≪見越入道 ⑰≫

オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈5〉(続き)沿岸には多くの奢侈が名を連ね 虫歯の村は朽ちてなお野に晒される、 一切を見渡す氾濫原から 養殖の保護区を越えて外洋へ出れば、 舳先に立つ競い肌は 渦としぶきで目も当てられず、 無辜の寓りは石群に似て 甲板の…

≪見越入道 ⑯≫

オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈5〉時つ国を望みつつ 日択りの海を ゆたにたゆたい 販路を拓き、水運を増す かの波乗り船、弥栄なれ と。 異国にあっても十組問屋は あらゆる時代の箱書きが 渡海造りと組積造下に 列をなし、色をなして詰め寄る所。 霧は野…