四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪懐疑に大きく振れる針≫

気温の急上昇と通勤疲れが体にこたえ、なかなかブログに手がつけられませんでした。また、ネットをめぐる嫌な事件が起こったり、総じてあまりに程度の低い使い手が多くいるとわかってくるにつれ、何かもう底知れぬ絶望的な徒労感に苛まれ、建設的な志が通じないのなら、やめてしまおうかとさえ思い詰めているところです。


その時々の一般人の関心事、つまり話題性や大衆性というものが、風俗流行レベルのいかに限られた波長の中に蟄居しているか…。他方、しきりに多様性を謳い、少数者の擁護、声なき声を取りあげると息巻く識者らもまた、差別や暴力の告発断罪に終始するとげとげしい喧嘩屋ばかりです。


そのはざまで所属を失い孤立を深め、しかも昂然と頭をもたげて生気を保ち続けることはもはや困難を通り越して限界に思えます。四半世紀を越えて悩み続けた私が、サポートを得て社会復帰を果たし、これまでで一番落ち着いた生活の中で、言論人の見識の低さに一石を投じる思いで始めたのが当ブログでした。


しかしそれぞれの社会階層は内向きに断絶し、言論人はポジショントークと馴れ合いのみ。私が願った志の越境はいまのところ何の兆しもありません。



ともあれ、早くも7月…。昨年、交通誘導の資格者となってすぐ新しい現場に派遣され、「ホテルの完成は9ヶ月先」ときいて気の遠くなるようなプレッシャーを覚えつつ産廃搬出トラックを誘導していたころから1年が経ちました。ホテルはすでに営業し、ネットで見る限り上々の評価で推移しています。


そして今の現場はといえば、14階建てマンションの大規模修繕工事。建物のまわりを足場で囲む、その最終コーナーをあと1週間で完成する段階です。


狭い私道の袋小路にトラックを突っ込んで資材を吊り下ろし、植栽づたい塀づたいに鳶職人たちが矢継ぎ早に手運びします。そのさい、大通りから鋭角にトラックを頭入れし、出すときは壁際すれすれにバックで出さねばならず、朝は交通量も通行人も多いため恐ろしく緊張します。搬入が終われば、あとは資材を運ぶときと居住者の出入りに注意して終日見張っていればいいのですが、暑くて日に焼けるのが困りもの。


現場の鳶職人は外国人も含めてだいたい10代から働いているので経験年数も長く、見習い以外はまさしくプロの美技と身のこなしで、上下左右に展開するさまはバレエを見ているかのようです。特に、朝顔と呼ばれる上向きの傘状に張り出したひさしを組み立てるさいは、傘の骨にあたる先端部へ大きく足を踏み出し、アラベスクやピルエットを思わせる所作で宙を舞い、つかんだ資材を身一つで端々にはめ込んでいきます。


彼らと同じ年頃だった時の自分が、昭和末期の受験教育の枠内で難関大学や文学周辺のことしか知らず、社会の実情や職業教育とは一切無縁の純粋培養にとどまっていたことを思うと、(親の学歴信奉による呪縛だったとはいえ) 何ぼんやり生きてたんだろなオレは、と不覚にも仕事中涙がこみ上げてしまいました…。



そんなわけで、しばらくぶりにブログを更新しましたが、筆者自身は機会があれば志ある人と知り合って現状を変えていきたい者なので、もう少し様子を見て投稿を続けようと思います。