四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪また一から足場を組んで≫

先週から、現場が変わりました。都内・山の手のマンションの大規模修繕工事。建物のまわりに足場を順次立ち上げている最中です。


正面の道路が狭いうえ、向いが保育園と託児所で、通園時間のピークなのにトラックを横付けして仮設材を下ろさないと、9時からはスクールゾーンとなって進入さえ禁止という、朝一に制約の多い現場です。9時以降の搬入についてはトラックを大通りへ回し、駐車場へ引き込んで行いますが、その大通りが交通誘導上の資格者配置路線に該当するため、私が担当となったようです。


新しい現場に入るときはいつも、場内の位置関係や動線を把握するまでの1日2日すごく緊張します。警備員になりたてのころ、工事現場特有のジャングルジムのような錯綜した動線で迷ってしまい、パニクって危うく配置場所に戻れなくなりかけた恐怖を2度経験しているからです。また、これも長い社会的ブランクの後遺症で、報告内容や人の名前などが肝心な場面でとっさに出てこないことがいまだにあり、新たな現場で一定の信任を得るまでは、朝礼などで突如言葉に詰まって絶句、というピンチも常に警戒しています。


幸い、今は私のヘルメットが2本線で、職長・経験者だと一目でわかるため、口下手なりに監督・他の職長らとコミュニケーションはとりやすくなりました。もちろん、一番大きいのは現場で責任をもってやってきた経験値の積み上げですが。


実際、以前の現場で見かけた職人やトラック運転手と再び会うことも割とよくあり、私の警備員らしくない容姿や性格のため相手のほうが覚えていることが多く、彼らと話すだけでも場の雰囲気がぐっとなごみます。


通勤時間がかかりすぎるため、新現場に常駐するかはまだ未確定です。もし常駐なら約5ヶ月。また海外旅行か、お盆休みの国内登山をモチベーションにして、安全に工期を全うしたいと思います。


《再起動の碑》

刻露清秀


踏みしめるのは
瞑る落ち葉と
起きたての霜柱


みどり葉には柚子の実たわわ
枯れ枝には柿の実まばら


最良の日、それは棟上げ
安堵の時、それは床上げ


家財を背負って征く峻坂と
側芽に子葉を開く導標


林相が遷りゆくにつれ
人称も二となり三となり
疎となり非となり岩海に至る…。


《第1連のみ抜粋》