四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪見越入道 ⑱≫

オラトリオ見越入道
刻露清秀

〈5〉(続き)

投げ縄も投網も錨も届かない
まさぐるような減音程より
サメはひとすじのコラールを追って
島々の基を十度さまよう。
儀仗が入れ替わるたびに
多くの血潮が水揚げされる
海流どうしのぶつかりのなかで
珊瑚の春から墓標の冬へと巡る舞台に
吐きつ戻りつ、またぞろ銛の致死量を浴びて。


知識層は堆積・風化し
誤謬の年代指標と化すも、
静かな海に腹這う者は
さらなる時の濃集を待つ。
深海底にも松煙が噴きあがり
カニや貽貝の苗床となるように、
地底の眠りを揺り動かすのは
粘性と恩寵の融合に他ならないからだ。


(続きは次回)


9ヶ月あまりに及んだビル改修工事。ビジネスホテルへと生まれかわり、引き渡しも済みました。でも細部の手直しやクリーニングなど仕上げの部分に日数がかかっており、警備の私が現場を去るには至っていません。年度末で切りよく終われば、達成感のままに念願の海外旅行を探しに行けたのですが、残念ながらもうしばらく延期を余儀なくされそうな雲行きです。なるほど、ハコはできても各部屋の寝具やカーテンなど、中身を詰めていくのはこれからの作業だからです。


さて、このブログを始めたのは昨年11月でした。ちょうど改修工事の本格化と重なったため、思うように更新できず、内容もやや現場寄りに引きずられた感があります。けれども、社会復帰としての仕事が安定したものとなるためには、どんな職種であれ、言われたとおりに動くだけの見習い的なポジションからどこかで脱却しなければなりません。そこで私はあえて資格者としての責任感や手応えを率直に語り、私と同様失意のブランクや出遅れから真摯に立ち直りを目指している方の奮起を促せれば、と思った次第です。


それにしても、このかん何にも進歩がなかったなぁと思えるのは、スマホで見る日々のニュースや論説の質でした。
相変わらず著名人のコメントに依拠した毀誉褒貶や些末な問題をめぐるひと悶着ばかりが目立ちます。
この空疎で惰性的な言論状況はいったいいつまで続くんだろう? すでに今から5年以上前、上記の詩1篇に私は暗澹たる思いを凝縮していました。