2018-01-01から1年間の記事一覧
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈4〉『第九』も『受難曲』も響かない 数万年裏の世界氷河に フラットではなく皆前趾足で 処女地への心技を刻む巡礼の体、 雪上確保、懸垂下降、 選び取られたそのルート図は もとより定本も完本もなく 抄紙と瀑布に満ちた前表…
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈4〉(続き)仕切岩だらけの洞窟の果てには 人を石筍ならしめてやまない 贖罪のアトリエ、追善のテーブル。 蝋涙と血手形と 鞭打つばかりの雫に囲まれ、 泥の名誉が封泥であるように 満面の恍惚は解かれるすべを認めなかった、 …
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈4〉(続き)焼成由来の部材を組んで 打ち建てられた城下の家並み、 炊き上がりの釜を覗き込めば 吹きこぼれる花言葉たち。 日に焼けた町と美白の里は、 なりを違え、則をたがえつ 琵琶を連ねて存らえてきた、 霓裳羽衣 と 菩薩…
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈4〉雲表に浮かぶ暦法、 懸隔を測る桟橋、 光沢は しじまに運河を曳いて 聖俗の衣は交わり、黒白の頭は流れる。営巣地には春秋の喜び、 原産地からは黄熟の便り、 久しく住所を逐われた土地にも 行政を回復するとの報せ。花々…
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈3〉(続き)粘土に尖筆、砂手習から 天文密奏会議録まで、 巧暦募集の求人に始まり 智慧の館に至る王道、 数理数略の労をいとわず 時に遺題を承継しながら すべての学侶は施主のみもとへ 無数のタイルが蒼穹を織り成すように。…
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈3〉(続き)灼けつくような造営のさなかにも 賦役者は思いめぐらす、 翼の陰に宿る布陣を。 昼は熱沙のかなたに揺曳し 夜は焚火のまわりに隠映し 尊厳の遺鉱を ひ押しして、 そこでは被疑者被験者の名も 無からしめることはな…
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈3〉(続き)雨季と乾季が自生を促し 砂地に裸足の実生が溢れ 影と風とが混ざりあう時 蜜蜂たちのくるぶしは癒えた、 受粉とはことづけることだから。 生命の束を崖に残して 遺恨と封鎖の対岸へ渡り 身を低くして作戦を待つ 一…
オラトリオ見越入道 刻露清秀 〈3〉時に義人は知る由もなく 天上に諮られ、賭けられてきた。 友も助言者も誘惑者も アイスフォールに隔てられ、 離反と懲らしめ、 涵養域にもいつか擦痕が顕れるように。 人は喘登を自負する限り 激しく飢え渇いているように…