四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪見越入道 ⑩≫

オラトリオ見越入道
刻露清秀

〈3〉(続き)

灼けつくような造営のさなかにも
賦役者は思いめぐらす、
翼の陰に宿る布陣を。
昼は熱沙のかなたに揺曳し
夜は焚火のまわりに隠映し
尊厳の遺鉱を ひ押しして、
そこでは被疑者被験者の名も
からしめることはなく
驕らしめることもない。


水張りのうてなに顔を寄せ合い
敷居のそばに寝顔をならべ、
波音を模し、光葉をかき分けて、
人はその未分化な憧憬を
来る馴化の課程に寄せる。
佯狂のすだれを巻き上げるたびに
いきおい不敵な威信を帯びて。
灌漑は石柱と燭台への道、
工期は生死をまたぐとも。


自注 : ひ押し の『ひ』は 金へんに 通

(続きは次回)