四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪11分の1のリカバリー≫

大型ショッピングモールの工事は、内装・外構ともに急ピッチで進行中です。内装は、ゼネコンからテナントへと徐々に重心が移り、作業員総数も500人近くまで増えました。それに伴い、建物内の動線も、シャッターの開閉や塗装・床タイル貼りなどで変更・迂回の連続です。また、いちいち内履きに履き替えなくては奥の詰所に到達できません。


外構もめざましい変容を遂げつつあります。難関だった旧郵便局解体・埋め戻しがついに完了し、余った残土の山もダンプでほぼ搬出。市役所前交差点からモール本体まで、2本のヒマラヤスギの巨木をランドマークに、カラー舗装の拡張された歩道と、緑地公園の整地作業が、通行人からもフラットに眺められるようになりました。


場内の工事用敷鉄板もトレーラーで殆ど搬出され、残るガタガタの砂利道とゲートはすべて、広大な駐車場を完成させるまでの土木車両専用出入口となりました。


8月の猛暑と、全日6:30開始の長丁場。さらに今月からは私がモール本体の解錠・開扉も行い、6:00到着即、着替えるより先に仕事に入っています。(ヘルメット着用・内履き持参で。)


当初の工期を大きく超過して、苦手な酷暑も出ずっぱりで隊長を務めあげるはめになった疲労・気苦労。勤務時間も6:00~18:00と丸半日。つい先日までは、寝ても覚めても警備や現場に関わる何かしらの雑務や確認事項で頭も身体もいっぱいいっぱいでした。

    ☆

さて、その私が警備の仕事に入ってから、もう4年7ヶ月が経ちました。


以前述べた通り、それまでの歳月はといえば、非正規雇用の職歴を挟みつつも、引きこもり・無業・失業のブランクが次第に長期深刻化していく孤立の泥沼でした。2015年5月から就労支援員のサポートを受け、半年がかりで11月には介護職員初任者研修資格を得て老人ホームに就職するも失敗。それまで一度たりとも顧みなかった警備会社の面接に自ら飛び込んでおずおずと新任研修に臨むや、号令口調で「回れ〜右!」…。支援員も首を傾げたその無茶な飛び込み。それがなんと、社会復帰への道にほそぼそながら点々と、破線のようにつながっていったのです。


そして交通誘導の4年7ヶ月余は、10倍すると、ちょうど警備以前の私の全人生に相当する長さだと気づきました。


つまり私は4年7ヶ月間かけて、失敗した人生の11分の1だけ挽回し、取り返すことができたのです!


むろん人から見れば、ツッコミどころも多いでしょう。幼少期や学校時代も一緒くたの雑な計算だし、有名中学Kに合格した直後などは、人も羨む順境そのものかもしれない。でも達成感や手応えとしては、手放しの称賛に包まれてユーフォリアに陥ってしまった幼稚な中学時代とは全く真逆の、生活困窮者自立支援制度に則ってのダントツビリ・リスタートだからこそ、生活自立と本気度の点で、人生少しは挽回できたかな、と日焼け顔で喜べる今なのです。