四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪非常時隊長、試練に直面③≫

物情騒然とした世の中になってきました…。


こちら大型ショッピングモール建設現場は日曜以外連日300~400人規模で稼働しています。本体棟の足場は荷揚げステージ以外すべて取れ、工事の主力は内装業者と建物まわりの外構工事に移りました。


とりわけ外構のほうは、一周1kmに及ぶ敷地全体を、県道や市道から出入りできる大駐車場やバスロータリーに変える大がかりなもの。特にロータリーは、現在営業中の郵便局の建物をまるごと壊した跡地に新しい道路を作るという段取りです。(郵便局の機能は仮設営業を経て、完成間近の新郵便局棟へ最終的に移転します。)


ほかにも周辺道路一帯の拡幅工事と、それに伴う電線工事、電柱移動・引き抜きなどが延々続きます。電気関係は他の警備会社が専属でつきますが、道路舗装はすべてうちの警備員が誘導するので、今後人員も増えていくでしょう。また慣れた隊員でも2~3日ごとに入れ替えて疲弊しないようにしています。


現場は今のところコロナ感染とは無縁で安全に稼働しています。警備の4人中、隊長の私ら早出の3名はいずれも始発列車で通っていますが、帰りは夜の混雑時に当たるため、自らの体調管理には人一倍敏感にならざるを得ないところです。

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それにしても、地元住民からずっと完成を待ち望まれているこの商業施設でさえ、コロナ感染問題は薄暗い影を投げかけています。東京のベッドタウンで周辺人口も多く伸びしろはある町ですが、本来入る予定だったテナントが直近の急激な業績不振のため見送るようなケースも出てきそうな情勢なのです。


ましてや、ここ2~3年で私も数か所関わってきた東京都内のホテル新設ラッシュに至っては深刻です。もう現時点で破綻確実な小規模ホテルの姿が目に浮かびます。インバウンド一辺倒で観光名所の近くに建てたそこは、国内客の需要や評価や知名度もなく、格安と中・韓スタッフの多さが売りでした。

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さて、今後コロナの社会的制約がどこまで広がるのか不明ですが、私個人は交通誘導警備員として今の現場で週に6日も、早出残業付きでフルに働けていることに、戦慄に近い喜びを禁じ得ません。隊長として不測の事態に目まぐるしく対応し、他の隊員に休憩を回すためにやむなく自らの休み時間を削り、アパートに帰れば結局3時間くらいしか寝られず、夜中に両足つって目が覚めることもある…。でも、交通誘導で4年間経験を積んでいる間に、経済的にも、社会的にも、人間的にも余裕ができて、客観的にみればもはや底辺とは呼べない存在になりつつあるからです。昨年末に会った友人も、今は稼ぐ時期だね、と言ってくれたことをふと思い出します。