四時歩武和讃(しじほぶわさん)

〜立ち直りから精神復興へ。一警備員の手記と詩篇~

≪『ダメ』を棄てて生き抜こう≫

大型ショッピングモール建物完成に向けて、毎日6:30から18:00まで、交通誘導警備の隊長として現場の工事関係車両をさばいています。春の嵐でカラーコーンが軒並みなぎ倒される日も、寒の戻りでみぞれが斜めに吹きつける日も。


遠く離れた4つの工事用ゲート。場内を通り抜ける必要があれば敷鉄板の上を数百m自転車でガタゴト移動します。でも最近は建物外周は掘削工事だらけ。公道へ出てまわる方が安全です。但しそちらも仮囲いに沿って道路拡張の途上で、至る所通路が狭められ曲がりくねっています。


そんな大規模工事だけに、関係者の出入りも多く、先週は連日、ゼネコンや施主の立ち会い検査、消防中間検査などがありました。また朝礼では相変わらず総勢350人もの作業員が業者ごとに列をなし、各職長からの人員の報告が延々と続きます。

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そのわれわれにとっても当然気がかりなのが、例のコロナウイルス感染の問題です。当現場でも作業前、全業者に体調チェックを義務付けていますが、万一感染者が出た場合、工事が止まることになり、その工期への影響は甚大なものとなるでしょう。


すでに国内外で、人の行き来も制限され、壊滅的な売上減に陥った業種も多々あります。景気ももろに悪化し、すさんだ政治家憎悪・他者攻撃の口汚い罵り合いが常態化したネット言説は、いまや見るに耐えません。


さてそんな状況下、私はかつてリーマンショック後の雇い止めやその後の孤立無業で行き詰まった忌まわしい経験から、これだけはマズイぞと思う言い草を見つけたので全否定しておきたいと思います。


それは、コロナ感染の拡がりで人々が街なかへ出られず、家に閉じこもる生活を余儀なくされる状況を見て、日本の『引きこもり』の存在意義を半ば挑発的にアピールする言説でした。著名な精神科医と、引きこもり界隈の発言者が相次いで同種のメッセージを発しています。いわば、引きこもり最強説。


ダメだこりゃ。


今の私には、その一言ですべて言い尽くされます。


引きこもり言説は結局ことごとく怠け者の逃げ口上でした。しかしマズイことに、幾人かの発信者が、マスコミ好みの体制批判の代弁者として、TVなどで発言機会を得てしまった。生活保護精神障害者認定で給付を受けながら引きこもり続ける方便があることを、世に知らしめてしまった。


いまコロナ禍の直撃で死活問題に直面している業種や、経済活動の収縮でまたぞろ大不況のあおりを受ける非正規の解雇者(いや正規も)が巷に溢れるとき、自ら動こうともしない長期引きこもりなど、いったい誰が相手にするでしょうか。昨年来、相談窓口も就労支援も格段に間口が広がりました。ここまでしてなお足を運べないような引きこもりや無業者に、それ以上何をしてやれるというのでしょう? 


すべては本人の決意次第だと思います。過去にけじめをつけて、就労支援員と共に生き直す覚悟があるのかどうか。情勢はかなり悲観的ですが、ひたむきな再生努力に励む限り、人に見放されることはないでしょう。それも人間の性(さが)だからです。